吉田孝行監督への評価が難しくなっています。
ヴィッセル神戸ではJ1連覇、さらに天皇杯優勝。
その実績に疑いはありません。
それでも今の清水を見ていると、一つの疑問が浮かびます。
神戸で結果を残した吉田監督の強みと、今の清水に必要な力は、本当に一致しているのでしょうか。
長崎、神戸での監督歴から考えてみます。

吉田監督は、最初から神戸で成功したわけではない
現在は「神戸をJ1連覇へ導いた監督」という印象が強い吉田監督。
ただ、そのキャリアは決して順風満帆ではありません。
2017年に神戸の監督へ就任。2018年に途中退任し、2019年に再登板するも、再びシーズン途中で退任しました。
2021年にはV・ファーレン長崎の監督に就任。
前年J2・3位のチームを引き継ぎ、J1昇格を期待されましたが、第11節終了時点で4勝2分5敗。
クラブは成績などを総合的に判断し、松田浩監督への交代を決断しました。
現在の実績だけを見ると意外ですが、吉田監督にも結果を残せなかった時期があります。
転機となった3度目の神戸
評価を大きく変えたのが2022年です。
シーズン途中、最下位に沈んでいた神戸の監督に就任。
チームをJ1残留へ導くと、翌2023年にはクラブ史上初のJ1優勝。2024年にはJ1連覇、さらに天皇杯も制しました。
なぜ、神戸ではこれほど大きな結果を残せたのか。
私は、吉田監督の強みの一つが、
「選手の特徴を整理し、勝てる形に落とし込む力」
にあると考えています。
神戸には大迫勇也という絶対的な基準点があり、その周囲には武藤嘉紀、山口蛍、酒井高徳ら経験と能力を備えた選手たちがいました。
前線からプレスをかけ、奪えば素早く前へ。大迫を生かすためならロングボールも使う。
理想のスタイルを当てはめるのではなく、「この選手たちでどう勝つか」から逆算する。
それが神戸では結果につながりました。
ただ、今の清水は神戸とは違う
ここが、私が吉田監督を見るうえで気になっているところです。
今の清水は、当時の神戸ほどチームとして完成された状態ではありません。
今季は多くの選手が加入し、個々の能力があっても、連携や組織として十分に力を発揮できていないように見えます。
だから必要なのは、すでにある力を整理することだけではありません。
新加入選手を融合させ、連携を深め、個々の力を引き出す。
そして、チームそのものを強くする。
神戸とは違う仕事が求められています。
「勝たせる力」と「強くする力」は同じなのか
ここが、私が最も疑問に感じている部分です。
完成度の高い選手をまとめ、その能力を引き出して勝たせる。
一方で、まだ完成していないチームを立て直し、選手と組織を成長させながら強くする。
この二つは、同じ能力なのでしょうか。
神戸で吉田監督が「勝たせる力」を証明したことに疑いはありません。
では、「強くする力」はどうでしょうか。
長崎ではJ1昇格を期待されながら、11試合で監督交代。
もちろん、それだけでチームを作る能力がないとは言えません。
ただ、神戸でのJ1連覇ほど明確に、発展途上のチームを強くし、結果につなげた実績があるわけでもありません。
だから私は、この点についてまだ懐疑的に見ています。
問われているのは、監督だけではない
これは吉田監督一人の問題でもありません。
コーチングスタッフ、強化部を含めたチーム全体の課題です。
選手を獲得して終わりではない。
その選手をどう生かし、どう伸ばし、どう組み合わせて清水の強さに変えるのか。
今季加入した選手が多いからこそ、時間の経過とともにチームが強くなっていることを示す必要があります。
数か月後、このチームは強くなっているか
吉田監督が神戸で残した実績に疑いはありません。
ただ、今の清水で求められている仕事は少し違うと思っています。
すでにある強さを整理するのではなく、足りない強さを作っていく。
だから見たいのは、目の前の一勝一敗だけではありません。
連携は深まっているのか。
選手の良さを引き出せているのか。
チームとしてできることは増えているのか。
そして、
数か月後、今より清水は強くなっているのか。
神戸で証明した「勝たせる力」に加えて、今度は「チームを強くする力」を清水で見せてほしい。
一人のサポーターとして、不安もあります。
それでも、このチームが少しずつ強くなっていく姿を見たい。
今は、そう思っています。

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