紙一重だった。
前半は横浜F・マリノスに押し込まれながらも耐え、後半は修正して流れを引き寄せた。
北川航也には何度もゴールの匂いがあり、新戦力もそれぞれの局面で持ち味を見せた。
それでも、結果は0-1。
ホーム開幕戦、19,077人が集まったアイスタで勝点をひとつも取れなかった。
悪くはなかった。
ただ――
悪くないだけでは、勝てない。
タイトルを目指すなら、こういう「どちらに転んでもおかしくない試合」を勝点に変えなければならない。
この敗戦には、今の清水に足りないものが詰まっていた。

前半|プレスの「少しのズレ」
立ち上がりから感じたのは、
「マリノス、想像以上に手強い」
ということだった。
清水は前からプレッシャーをかける。
しかし、なかなかハマらない。
最初の寄せと後ろの連動が噛み合わず、横浜FMに外されると、そのまま全体が後退する。
吉田監督も試合後、ファーストプレスが決まらず「後ろにずるずる下がっていく」場面が多かったと振り返っている。
まさに試合を見ながら感じた「中盤のプレスの位置が不安定」という違和感だった。
前節まで最前線にいたオ セフンが出場停止となり、代わって木下康介が先発。
もちろん、これだけが原因ではない。
ただ、最初のスイッチを入れるタイミング、限定する方向、その後ろの押し上げ。
ほんの少しの違いが、チーム全体のズレにつながっていたように見えた。
新戦力は見せた。ただ、まだ「点」の状態
それでも、すべてが悪かったわけではない。
須貝英大、藤井智也、木下康介、ジャーメイン良。
新戦力は、それぞれの局面で良さを見せた。
藤井は積極的に仕掛け、木下は前線で身体を張る。
ジャーメインはプレスバックでも存在感を見せ、須貝は右サイドから何度もボールを供給した。
20分にはジャーメインのプレスバックから敵陣で奪い、嶋本、北川、藤井とつないでフィニッシュ。
狙っていた形が出た瞬間だった。
ただ、この試合で感じたのは、
「個々ではいい。でも、まだつながっていない」
ということだ。
一人ひとりを見ると、良いプレーはある。
しかし、それが連続しない。
守備でも攻撃でも、一つ目のプレーの先に二つ目、三つ目が続かなかった。
セットプレーでも何度かチャンスを得たが、決定機にはつながらず。
嶋本自身も、こういう試合ではセットプレーが重要だとした上で、キッカーとして結果を残せなかったことを悔やんでいる。
この「点」が「線」になれば、清水はもっと怖くなる。
後半|修正。そして効き続けた北川航也
後半に入ると、試合の景色が変わった。
清水の距離感が良くなり、ボールを奪ってから前へ出る場面も増えた。
そして、その中心にいたのが北川航也だった。
54分。
ジャーメインのクロスに北川が頭で合わせるも、GKがセーブ。
66分には須貝のクロスに再び北川。
これもGKに阻まれた。
前半20分の藤井の決定機でも、北川が右サイドでボールを受けて逆サイドへ展開している。
ボールを引き出し、つなぎ、最後は自分がゴール前へ入っていく。
この日の航也は、ずっと効いていた。
だからこそ、一本欲しかった。
後半の清水は悪くない。
むしろ、勝点3を狙える流れだった。
それでも決め切れない。
「悪くはない。でも、決め手がない」
そんな時間が続いた。

78分|「一つのズレ」が勝敗を分けた
そして78分。
右サイドから折り返され、シュートを打たれる。
梅田透吾の正面だったが、パンチングがうまく当たらず失点。
0-1。
梅田は試合後、
「失点の部分に関しては完全に僕のミス」
と責任を背負った。
確かに、GKとして止めたいシュートだった。
ただ、この失点を「梅田のミス」で終わらせてしまうと、この試合の本質を見失う。
吉田監督が問題にしたのは、その前だ。
サイドでボールを持った相手への圧力が足りず、自由にボールを入れさせてしまった。
寄せる。
コースを消す。
シュートを打たせない。
一つひとつは小さなプレーだ。
しかし、その一歩が遅れれば最後はGKまで届く。
そして、GKにもミスは起こる。
一方で、清水にも得点するチャンスはあった。
0点では、GKに一度のミスも許されなくなる。
攻撃陣が一点を取っていれば。
その前でクロスを止めていれば。
最後にGKが防いでいれば。
チーム全体にあった「あと少し」が、0-1という結果になった。
紙一重。その向こう側へ
試合内容だけを見れば、悲観する必要はない。
前半の問題は後半に修正できた。
新戦力にも可能性が見え、北川は何度もゴールに迫った。
だからこそ、悔しい。
紙一重だった。
ただ、タイトルを狙うなら、それで終わってはいけない。
吉田監督も、
「最低でも勝点1は取らなければいけないし、ホームであれば勝点3は必要」
と語っている。
強いチームは、こういう五分の試合で勝点を拾う。
一歩寄せる。
一本を決める。
一度のピンチを止める。
その小さな差を勝点に変えられるか。
この日は、それができなかった。
まだ第2節。
修正する時間はある。
ただ、この敗戦を「惜しかった」で終わらせてはいけない。
もっと強くなるしかない。

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